concept

東日本大震災により、私たちは多くのものを喪いました。地震と津波そして原発事故による放射能汚染は、私たちが今まで立っていた場所を根底から覆しました。私たちは、寄る辺なく不安な気持ちを抱えたまま、未来に向かわざるを得ません。

あちこちで目にする「がんばろう」の文字。「よし、がんばろう!」と思える日もあれば、目や耳を塞ぎたくなる日もあります。久しぶりに会った友人とおしゃべりをして元気になったと思ったら、その日の夜には再び涙を流すこともあります。そんなことを繰り返しながら、何となく毎日が過ぎていくのかもしれません。

私たち「語りと記憶のプロジェクト」は、みなさんが抱えている声にならない想いを語ってもらい、その記憶を未来に伝えていくメディアになりたいと思っています。

降りかかった悲劇の大きさは人によって異なるかもしれませんが、心に受けた傷は、程度の差はあれ、おそらく誰もが同じように負っているものではないでしょうか?
「沿岸部の人たちに比べたら。」「家族を亡くした人に比べたら。」「ふるさとを無くした人に比べたら。」そう言いながら、私たちは、言葉を噤んでいないでしょうか?心を塞いでいないでしょうか?

語ること、押し殺していた感情を吐露すること、そして必要であれば涙を流すこと、笑うこと、そしてそれらを誰かと共有することは、私たちに元気を与え、次の一歩に踏み出させてくれるはずです。私たちは語ることを必要としています。あなたの想いに必ず誰かが応えてくれるはずです。

だからといって、無理に語る必要はありません。語れるようになるのに時間がかかることももちろんあります。

でももし、誰かに何かを伝えたくなったら、おしゃべりしたくなったら、その時は、あなたの経験を話して下さい。あなたの想いを語って下さい。あなたの疑問を問いかけて下さい。そして、次の世代に遺して下さい。あなたの歴史はみんなの歴史になります。

「語りと記憶のプロジェクト」はそんなプロジェクトです。