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2011年 7月31日(土)10:00-16:00

語りと記憶のカフェ

東北工業大学長町キャンパス学生ホール&堀江研究室


第1回の「語りと記憶のカフェ」は、震災時の「食」をテーマに、午前の部と午後の部の計2回を行いました。

午前の部は当日に開催された東北工業大学オープンキャンパスのライフデザイン学部でのリレー講義「東日本大震災を学問から考える 〜キミたちが被災地復興の主役を担う〜」の中で行いました。会場は学生ホールの一角です。

参加者は東北工大への進学を検討している高校生とその保護者のみなさんです。

はじめにプロジェクトメンバーの堀江から「語りの記憶のプロジェクト」のコンセプトの紹介をしました。
次にデザインのためには、「色」と「かたち」を考えることに加えて、「作り方」と「使い方」を考えることの必要性ついての説明をし、「新たな経験を提供するため」のアイデアを生み出すためには、ワークショップを行ってアイデアを創出する手法があることを話しました。

ワークショップでは参加者に3〜4人ずつグループになってもらい、ひとりずつハガキ大のカードに絵や文字で、震災時の「食」をテーマに自由に表現してもらいました。
そのカードにまつわる話をグループ内で語ってもらうのですが、語りだすと止まらない様子でした。
つぎに宮城県を中心とした白地図に、カードを貼り付けてもらいました。
貼り付ける場所は、カードに書いた出来事の起こった場所です。

グループの代表の参加者数人に語ってもらいましたが、「塩むすび」の語りが印象深く残りました。
それは、東日本大震災から数日後に食料品の買出しに出かけたところ、たまたま「塩むすび」を売っているところに遭遇し、1個50円の「塩むすび」を6個買ったそうです。具の入っていない「塩むすび」ですが、温かいものを食べられることと、お腹いっぱいになることの喜びを語ってくれました。
温かい食べ物のありがたさ、空腹からの解放は、東日本大震災を東北地方で経験した他の参加者が共感するものでした。

最後に、このようなワークショップを通して、「語り」を閲覧・表示するための道具のデザインをこれからしますと、参加者に伝えて午前の部を終了しました。

午後の部は堀江研究室に場所を移し、ジャズをBGMにお茶とお菓子を楽しみながら、参加者の高校生に午前の部と同様に震災時の「食」をテーマに、カードに絵や文字で表現してもらいました。
ひとりの高校生が「アイス中毒」についてのカードを書いたのですが、このカードの話に加えて東日本大震災以降の生活についての話が湯水のごとく溢れ出し、1時間以上も語ってもらいました。
カードに描いてくれた「アイス中毒」の話は、普段からアイス好きで冷凍庫にはたくさんストックしてあり、震災による停電で溶けてしまうことから母親に全部食べても良いと言われ、完食して大満足したそうです。
しかしその後はアイスが救援物資で来るはずもなく、スーパーにアイスが並ぶまでの2週間は、「アイス中毒」と言っても過言ではないくらい、辛い思いをしたそうです。
普段は手に入ることが当たり前だと思っていたモノが、なかなか手に入らない辛さは、他の参加者も共感するものでした。

午後の部のカードも午前の部と同様に、宮城県を中心とした白地図に貼り付けてもらいました。
発災時に東北以外にいた参加者のカードは、地図の外に貼り付けました。
それらのカードには被災地の人々が食料不足に困っている事を知りながら、自分たちは満足に食べられていることの申し訳ないと思う気持ちと、やるせなさについて書かれていました。被災地にいた人々にとっては、思いを寄せられていることを強く感じました。


文責 矢作佳織